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映画「ラストマイル」公開!
脚本・野木亜紀子、監督・塚原あゆ子のゴールデンコンビによる映画「ラストマイル」を観ました。ドラマ「アンナチュラル」と「MIU404」と同一の世界で描かれるシェアユニバース作品。具体的な展開等のネタバレはしないようにします。しかしストーリーの背景に関する情報には触れていきますので、真っさらな状態で映画をご覧になりたい方は、読まない事をお勧めします。
その荷物が爆発することは、繰り返し見ていた予告編から察しはついていた。けれども、この巨大な空間で働く人間のうち、「社員は9人」という台詞の方に強い衝撃というか、冷たい生々しさが。フィクションの世界における大爆発シーンには若干食傷気味な位麻痺しているのに?現実味のある数字の方にはリアルにショックを受けるというこの感覚。2年勤務でベテランと呼ばれるくらい、人の出入りが激しいという事?そしてスクリーンいっぱいに出勤してくるあの非正規雇用の労働者の人たちは(この1カ月あたりの登録者で)千人を超えるという。デカい箱の中に「街」が。その街のゲートでは、ペナルティに関するアナウンスが繰り返し流されていくという、ちょっとした近未来の地獄を見ているような。
そして一方、下請けは、取引先の大企業には逆らえない。無理な要求も受け入れざるを得ない?
ラストワンマイルを担う配達員。配達一件の利益がたったの150円?人件費からあらゆる経費が安く叩かれて「全てはお客様の為に」というマジックワードによってウォッシュされてしまう。休憩時間もまともに取れない長時間の配達。100円ちょっとの利益を何軒積み重ねれば人間らしい暮らしが送れるのだろう。
こんな不当な労働が認められるものか。いや、昔の同僚はそんな甘っちょろい言葉は吐かなかったんだという父親は、きっと昭和の労働者の美学を引き継いでいるのでしょうか。しかし、同僚はしゃかりきになって働いても、利益はどんどん削られて、過労の末に……
もし不当な労働行為を強いられた下請けの中小企業が声をあげた時に、その要求に応じない場合に「もう二度と取引をしない」などと言われる等、どんなに厳しい条件であっても受け入れざるを得ない状況に追い込まれてしまう、本来、そのような理不尽な状況から下請事業者を守る為にある法律が「下請法」なのですが、たぶん、この世界規模のショッピングサイト。下請け法にある11の禁止項目のいくつかに触れている気がします。(長くなるので省きますが気になる方は調べてみて下さいね)しかし、そのような法律があったとしても、もしかしたら日本人の多くは、いまだ、耐えて我慢すること、文句を言わずに勤勉に働くことを美徳とする、或いは、思ったとしても、意味がない、恐ろしい、そもそもそんな手段があるとは思いもよらなかったりで、声を上げる事が無い。というケースがほとんどなような気もしています。(少しずつ、声を上げる事例も伝わってはくるけれど)
それも、回る歯車が巨大であればあるほど。声を上げることは容易ではない。
そして、歯車を構成するひとりひとりの労働者の力はどんどんと削がれていく。たとえ声を上げようと勇気を出してみたところで、時すでに遅しだったり、巨大な力に潰されてしまったり。最後は命をかけての異議申し立て?(実際にそのような話しをここ数年のうちに一度ならず耳にしている事が既に恐ろしいのですが)
命をかける見上げた度胸なんか、いらないんだよ。
くそが。
そうなってしまったらもう遅いんだよ。
この国は、一度でも動き出したでかい歯車を止める事がどうも苦手らしい。より巨大な力が意地でも綺麗で耳馴染みも良い言葉で全てを覆い隠して強行されてしまう。
それはまるで、キラキラしたクリーンな外見の暴力。
沈黙する羊は、ひとり、またひとり、姿を消していく。
いや、待て。
ここにいるのはヤギさんだっけ?(「羊さ〜ん」「ヤギです!」のやり取りは良かったな)
声のでかいヤギさん。
こうなりゃ、せーの!で一斉に止めてみませんか?
大きな歯車になす術もなく潰されるよりも、ましてや自分の命をかけるなんて事はしてはいけない。このユニバース全体の構成員で、俺たちを羊と思って侮っているあいつらの正体を暴いてみせよう-と、ユニバースの創造主からのメッセージと受け止めました。
Posted by
にいさん
at
2024年08月26日
21:00