にいさんの しらしんけん☆

島ないちゃーの劇団員。上村洋さん 通称にいさんのブログ。
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コードネームはOSO18(噂のNHKスペシャルを見た)


コードネームはOSO18(噂のNHKスペシャルを見た)


 (ドキュメンタリーなので、事実のあらましを書きますが、これから番組をご覧になる人は読まないで下さい。そんな、「ある驚き」と共に番組を見ました)



 噂のNHKスペシャル『OSO18 "怪物ヒグマ"最期の謎』を再放送で見ました。(ナレーションは國村隼さん)

 放牧していた牛が、次々と殺されていく。

 犯人は一頭のヒグマだって!?

 いや、ちょっと待てよ。

 そんな馬鹿な話しがあるか?熊は出会い頭のアクシデントで人を襲うことはあったとしても、普段は森の草や木の実を食べる「限りなく草食に近い雑食系の動物」だろ!?(生き物も食べるったって昆虫だろ??)

 体長2.2メートル。体重330キロ。最初に測った足跡のサイズが18センチ(その後は16〜17という計測も)。そして目撃されたオソツベツという地名をとって「OSO18」(オソジュウハチ)というコードネームがつけられました。

 そいつは北海道で、2019年から2023年の間に66頭の牛を襲って、そのうち32頭が食い殺されたという話し。国道沿いの金網がグニャリとへしゃげて破壊され、渡れないはずの向かいの森へと、のっしのっしと移動していく。プロのハンターたちが仕掛けた罠は悉く回避され(はっきりと罠に気付いて?近付いて揺さぶる映像が監視カメラにも)人間の気配には特に敏感で。「犯行」に及ぶのは、決まってハンターが狩猟の出来ない夜間を狙って。人々は「彼」を「怪物ヒグマ」「忍者熊」などと呼んでいた。熟練のハンター達が集まって本格的な捕獲作戦も(罠を避けられた挙句、餌だけを奪われて)失敗。

 打つ手は無いというのか。

 4年に渡って、ヒグマの専門家、ハンター達が翻弄され続け、家畜はその一頭のヒグマに襲われ続けていった。

 賢くて狡猾?いや、むしろ極度に臆病で、

 肉への執着が半端ない?

 野生の熊は、そんなふうには育たないはずだ。と人は言う。

 そんな「彼」OSO18は、今年7月30日。あまりに呆気なく、プロのハンターではない役場職員によって(まさかOSO18とは思いもよらず)射殺されて、解体業者へと持ち込まれ、食肉として東京のレストランでジビエ料理として振る舞われていたって!?

 OSO18捕獲に執念を燃やしていたリーダーはじめ、ハンターの人たちは皆、信じられないような気持ちというか、悔しいという以上に、事実を受け止め切れない様子。まさか、あの恐ろしいヒグマが……

 何故、「彼」は肉を食べる等という習慣を身に付けていったのか?この番組の凄いところは、もはや(解体までされてしまい)検証すら不可能と思われたOSO18の骨を、解体されて廃棄された沢山の動物たちの肉体だった欠片の山からOSO18の腰椎の骨を遂に探し出し(!)大学での分析にまでこぎつけた事。そこでは「彼」のこれまで生きてきた年代のみならず、食生活に至るまで、何歳から肉食を開始したのか?という事についてまでをも突き止め、あの「呆気ない最期」に至った時に、どういう健康状態にあったのか?という事までもが明らかになっていくのです。



 
 その地、北海道という島もまた、大和の人間たちが移り住んでからというもの。原生林は次々と伐採され、森だった場所は牛の放牧地となり、又、一時は絶滅危惧種であったエゾシカは保護をされた結果、激増する事態に。熊の生息地はどんどん狭まっていきました。人間の開発が森の姿を劇的に変えてしまった事でもたらされた事態とは。

 住処を追われ、目の前には沢山のエゾシカと放牧された牛の姿。「食肉」という習慣を身に付けてしまったヒグマ。それがOSO18。当時5歳。

 5歳の頃に肉の味を知ったヒグマは、以来(本来の食べ物である草や、木の実には目もくれず)肉のみを食べていくようになりました。

 人間たちからは「異常行動を行う恐ろしいヒグマ」と見られていましたが、自然界では強い個体がその生息域の頂点に立ちます。「彼」のエリアにもし他の雄のヒグマがやって来るようになるとどうなるか?

 番組は、人間によって野生の環境を変えられた中で普通ではない食習慣を身に付けてしまったヒグマが、いかなる経緯で「最期」を迎えたのか?その原因のひとつになったかもしれない出来事についても触れていくのです。

 そのOSO18の棲む森に設置された監視カメラに、ある日、子連れの雌熊が映されました。時を同じくして複数の雄のヒグマが「彼の生息地」へと集まってきたのです。雌のヒグマがやって来た為に?

 ただでさえ敏感なOSO18は、どうやら、「彼ら」の存在をも警戒したらしい。「彼」は逃れるように生息地の森をどんどん下っていく事になります。その先は、特別保護区となる(きっと彼にとっては楽園のような場所だったかもしれない?)森が。


 (もし、あの雌のヒグマがそこへ現れなかったなら……)


 限られた生息地。移動しながら、いつもの放牧された牛を食べることが出来ない状態が続き。とうとう最期を迎えた時に「彼」の胃は空っぽだった?

 そこには、本来の森の姿はなく、大和の人間が作り変えてしまった不自然な環境が。

 そんな(本来的ではない)不自然な環境の中で、極端な食生活を身に付けてしまった「彼」は、もはや野生のヒグマとして生き抜いていく事が出来なかったのだとしたら。

 「彼」は家畜を襲った犯人という以上に、人間による被害者ではなかったか。





 東京のジビエ料理の店。「OSO18の肉が食べられる」とのSNSでの投稿がバズったそのお店で。お客さんが「彼」の肉の入った鍋を嬉しそうにスマホで写メを撮る光景が、なかなか恐ろしく、私には映りました。


 


Posted by にいさん at 2023年10月20日   22:43