にいさんの しらしんけん☆

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真藤順丈 著【宝島】読んだ!


https://haruniy.ti-da.net/e10854968.html


(小説【宝島】具体的な展開、ネタバレには気をつけて感想を書きます。豊後の国のユンターの名にかけて。)



「俺たちの島じゃ戦争は終わっとらん」

オンちゃんはそう言ったのさ。

それは、いつ 終えたのだろう?




戦後すぐの沖縄を、こんなに熱いドラマにして描いた人物がウチナーンチュではなくて、県外出身の作家さんという事に驚かされる。

あきさみよう!

しかも、自分よりも若い作家さんという事にも。

あきさみよう!

直木賞受賞よりも前から「我ら本もあいのユンター」の間では噂になっていたこの小説。我が「本友」の嗅覚にも・・?

あきさみよう!


自分のような、ヒーローに憧れる人たちには是非にお勧めしたい小説です。

しかしですよ。

ヒーローが必要とされる時代というのは、悲しい時代かもしれないと 私は思ってもいます。

悲しい-は 言い過ぎかな?

大変な-

そう、生きることに大変な、そして大きな災いや理不尽と相対するような-そんな時代。

ひとは無責任に言いますよ。

混乱の中にも生きるエネルギーに溢れ、凄い奴らが群雄割拠した輝かしい時代だと。

言うのは簡単さ。そう言うあんたはどうなのさ?

そんな凄い奴に取って代わろうとした覚悟や熱い思いを胸に抱いた「彼ら」はそんな凡庸な言葉はきっと吐かない。

あの時代の沖縄は、事実 ヒーローたちが存在した。

そんな 時代だった。

この小説は沖縄のいわゆる『本土復帰』(と呼ばれるアメリカから日本(やまとぅ)への施政権の移譲)が行われるまでの時間の中で描かれます。その時々の事件や事故は史実に基づくものです。宮森小学校への米軍ジェット機墜落も、米軍のB52墜落炎上も、米軍が(本国にすら置こうとしない危険極まりない化学兵器)毒ガスを沖縄の基地に隠し持っていた事、さらにその大掛かりな移送に県民が恐怖した事も、度重なる米兵による女性への暴虐も、刑務所内での騒乱に対し亀さん(瀬長亀次郎さん)が説得を試みた事も、そしてコザ暴動。

それらの出来事の裏では、きっとグスクやヤマコやレイのような人たちが走り回っていたに違いない。何人もの彼ら「オンちゃんの仲間たち」がいたのだと想像する。

自分の周りには、レイのような人間は(残念ながら?)見当たらないけれど、グスクとヤマコには、何人かの友の姿を重ねていました。彼らの抱いた気持ちはきっと 多くのウチナーンチュが受け継いだものかもしれない。そしてカフー(果報)の運び手たるレイの言葉にも 歴史の中での県民の本音をこれでもかと濃縮して濃縮して それを鋭利な刃物のように研ぎ澄ませたのが、あのレイという存在ではないか?

そして、オンちゃんが基地から持ち出した戦果とは、

あ 、それは言えない。

でも、最近目にしたある象徴的な 出来事と重なって見えてしまったのは私だけだろうか?

人の肉体は滅ぶとも その「象徴」は 生き続けるのです。誰も否定しようのない事実として 今に繋がって 意味を投げかけてきたように受け止めてしまう自分がいました。




それから、土地の歴史に触れることは、とても難しく、勇気のいることだと思います。それも、その土地の言葉で書こうとするんだから、この真藤順丈さんという人はいい度胸をしている。あんたも立派なオンちゃんのグーやさ!

もしかしたらだけれど、

この小説は、オンちゃんが、真藤さんの筆を使って(真藤順丈さんという作家の体を使って)彼によって書かされた小説じゃあらんね?

そんな気さえしてきた。

そしてこう言わせたのさ。

「さあ、起きらんね。そろそろほんとうに生きるときがきた」と。


















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Posted by にいさん at 2019年05月20日   23:47