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『成瀬は天下を取りにいく』
西武大津店と、その店舗を愛した人たちへ敬意を捧ぐ。
(ネタバレは出来るだけしないように気をつけます)
地方都市のシンボルが失われてしまうというのは、おおごとです。ちょっとした大イベントですよ。東京のような大都市に住んでいた頃は、「それ級」のお店がバンバン消えてはまた現れて、って感じで目まぐるしく景色が移り変わってって麻痺しちゃいそうになっていましたが、日本全国多くの地方都市は、そうではない。シンボルと呼べるような、でかいお店がひとつでもあれば上等なもの。(ここ数十年で、そうしたシンボルは街からどんどん消えて、郊外のイオンが増えてくるという景色を随分と見せられてきたような。別にイオンをdisるわけじゃないけどね)
滋賀県大津市には西武があったのか。
44年間のご愛顧、誠にありがとうございました
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
成瀬あかり氏が取った行動とは……
大津市。琵琶湖。中学校の修学旅行で行ったな〜。(今はどうだろう。当時80年代、別府市の中学校の修学旅行は京都と奈良メインのちょっぴり滋賀県みたいな関西ツアーでした)
1泊目の宿泊がね。大津市だったんですよ。ミシガンにも乗らんかったし、琵琶湖は一応湖畔近くのホテルやったから見たは見たんですけどね〜、何故か大津では宿に泊まっただけで、観光は大してしなかった気がします。
いま、滋賀県のイメージといえば、琵琶湖とイナズマロックフェスと西川貴教さん。くらいな不勉強な私でございましたが、今は違う。
以上の3つに加えて、成瀬あかり氏と西武大津店が堂々加わりましたよ(=゚ω゚)ノ!
西武大津店については「地元の人たちの思い出の中の」っていう感じかもしれませんが。
成瀬氏の行動には最初から最後まで胸をつかれっぱなし。
彼女の姿に、友人のみか地域の人たち、思いもよらない人たちが影響を受けていくという展開がめちゃくちゃ良いですね。
こんなことあるんだな
割と無表情な顔を連想させる成瀬氏だが、たまにウルっとしてみせるのは、物事を深く味わって受け止めている証であろうか。起きている事の意味をしっかりと分析して咀嚼するリズム感は、それは中にはリズムを合わせ難い人たちもいるかもしれないし、時には心ない言葉を「周りの空気に合わせた人たち」からかけられる事もあるのだろう。
しかし、成瀬氏にはびくともしない。場合によってはイジメ未遂犯をビビらせ退散させるくらいに。彼女は強い。太い。強靭な。そんななにかを身につけているらしい。
彼女は己のペースを持ち、賢くて、強い。そして相方の島崎さんはというと、最高の相棒ですね。島崎さんのような人がいてくれると世の中がしっかりと回るような気がします。中には人の個性を嘲笑したり冷めた目で見たり居ないものとして扱うような人もいる中で、島崎さんは相手の個性を楽しみつつ肯定する。巻き込まれながらも結局全力で乗っかっていくの姿が良いですね。
それから、元々は短編の別作品での登場人物だった?『階段は走らない』のふたりも良かったな。こちらは世代的にも、とても身につまされつつ。そんな宮島未奈ユニバースのキャラクターたちが最後は互いに影響を与え合って?
いや、書くのはこれくらいにして。あとは、読んで下さいな。
2024年本屋大賞受賞おめでとうございます!
リアルに天下取っちゃったね(笑)
ってわけで、いま、どこの書店でも目立つ棚に置いていますよ。
Posted by
にいさん
at
2024年05月02日
21:27