にいさんの しらしんけん☆

島ないちゃーの劇団員。上村洋さん 通称にいさんのブログ。
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映画『戦雲 いくさふむ』を別府ブルーバード劇場で。

映画『戦雲 いくさふむ』を別府ブルーバード劇場で。


 今日、4月28日は、うるま市で元海兵隊の米軍属男性による女性殺害事件が起きてから8年の日。忘れもしない、沖縄中が悲しみに包まれたあの時の空気。県民集会における「本土の人間」に向けられた訴えの言葉も。沖縄で、戦後幾たび繰り返されなきゃならないというのか。

 沖縄へ集中する理不尽への(このようなことが繰り返されてきた歴史的経緯への)感情が湧き上がったあの日。あれから8年が経ったこの日に、地元の別府市で、映画『戦雲』を観ました。




 (以下、ドキュメンタリーなので特にネタバレ等は気にせずに書いてまいります)




 これまで、辺野古や高江の現場をはじめ沖縄で進む新たな米軍基地建設の〈現実〉と住民たちの姿を追った『標的の村』『戦場の止み』『標的の島』の三部作。そして沖縄戦での(特に本島北部で繰り広げられた旧日本軍による悍ましき)工作員による諜報活動を追った『沖縄スパイ戦史』を手掛けた三上智恵監督のドキュメンタリー最新作がこの『戦雲』(いくさふむ)です。

 沖縄本島のみならず、与那国島、宮古島、石垣島、奄美大島でも今まさに進行している新たな自衛隊基地の建設、防衛の名の下に進む(要塞化!?)施設の増強。それはあまりに急速に進行していき、次から次へと出てくる

 そんな話し聞いてませんけど?

 という住民からの怒りと戸惑いの声、声、声、

 地元に出来た自衛隊施設から聞こえてくる銃声が夜も止まない?(無理だ、それ、その環境。地元でも時々否応なく聞かされるけど、これ、近過ぎだろ )

 いやいやいや、これ、いくらなんでも受け入れられないでしょ。

 それから。地元住民の了解も得ていない事を首長が強権発動しちゃっていいんですか?

 ミサイル訓練?

 地震や台風などの天災を想定した訓練ならわかります。が(税金使って)恐怖を煽りながら実際問題蓋然性が高いとは思えない、例えば北朝鮮のロケットがこの島にピンポイントで着弾することを想定しての訓練とか??それを撃ち落とすミサイルを撃つだとか???(それ、出来るん?って言われてる技術で、凄いお金がかかって、って言われてるやつ)派手にサイレンやら物々しい迷彩服の自衛隊員やらが動員されて島の危機を煽ってるように見えるあんたらの方がよっぽど恐いよ。しかも全島避難のシナリオを声高に説明されるとか。(その説明に自然災害である三宅島噴火を例に出される事への疑問、不信を口にされていらした住民の方の声、まったくその疑問「それな!」ですよね)

 台湾から最も近い与那国島は歴史的にも台湾とも交流を重ねてきた歴史があったのが、日本に「復帰」してからはそれが断たれたという証言もありましたね。近隣の国から見れば、目の前でミサイル基地の建設だとか弾薬庫だとか物々しい自衛隊基地の大規模化が進む姿がどう映るか?「防衛」の名の下に一触即発の緊張感が増してやしないか。そうではなくて、東アジアで戦争など起こし得ない環境を作り出すことこそが本来の政治のあるべき姿ではないのか?過去、今よりもっと緊張に包まれていたはずのアジア太平洋地域の国々で、ASEANの枠組みによって対話を重ねながら平和の枠組み作りが進みつつある国際的な流れとは真逆の「緊張と恐怖よる〈防衛政策〉」に思えてなりません。(リアルな国際情勢よりも「アメリカ様の意向こそが全て」ってなってない?)更には、それを何故、毎度沖縄の人たちばかりに押し付けられねばならないのか?

 石垣島では市の住民投票条例の要件をはるかに超える署名が集まり、若者中心による住民投票を求める運動が島全体で盛り上がりました。それを、議会が否決した上に市の自治基本条例から住民投票の条文を削除するとか、酷くないか。議員が選挙で選ばれるのは白紙委任を意味するものではないぞ。住民投票を求める人たちは、新たなミサイル基地に反対の人ばかりではなかった。むしろ、自衛隊の誘致に賛成をしたという人たちの姿も映されていましたが、それが、領海の外まで、国の外に攻撃をするなんて話しは聴いていませんよ!?という住民の方の声はもっともだと思います。

 次から次へと後出しジャンケンのように「聞いてない話し」が出てきては前に進んでいく。自衛隊誘致に賛成の人たちの不信も高まっていく現状が(最初から反対の声は聞こえてきていたけれど、こうしてドキュメンタリーとして、多様な立場の人たちの声を改めて深く聞いてみたら、益々酷い話しだな……)

 いくら、カメラに映る自衛官の方個人が良い人たちであっても(それはそれで複雑な心境にはなれども)自衛隊という組織やその向こうにいる政府、地元を含めた与党の政治家たちへの不信感たるや。自衛官の方の中には地元の社会に入って信頼関係を築いておられる方がいることも伝わってきたし、その家族の姿も目に焼きついてはきたけれど(信頼関係を築いても2年でいなくなるのね…とか)門の前で迷彩服着て手に持ってるそれは何ね?その銃は一体誰に向いてるの?沖縄県民がかつて戦争で体験した事知っててその格好でそんなもん持ってるわけ?

 そんな、気持ちが沸騰する中で救いになるのは、地元住民の(主要キャストと呼ぶべき?)人たちの姿。はっきりと反対の言葉を諦めずにあげ続け、祈りのように歌い続け、川田のおじぃのカジキとの対決には手に汗握り、笑いまで届けてくれる。(そして、最初あれだけ自衛隊配備に対しても肯定的に話していた川田さんが……)

 三上智恵監督がカメラに捉える住民の人たちの姿には、いつも胸をつかまれます。これを遠くで起きている誰かのセイジのもんだいなんかじゃなく、はっきりと顔が見えるこの人たちがこんな思いを強いられているという事を突き付けられるのです。その「強いて」いるのは誰か?「あんぜんほしょうはおきなわにまかせておけば?」なんて遠くで言ってる人間に残念ながら何度か対面した事があります。そんな「あのひと」と、現実を止められていない「私」について、考えを巡らせずにはおれない映画です。


 映画『戦雲』は、別府市の別府ブルーバード劇場では1週間限定の上映のようです。5月2日まで。時間は朝10時30分から12時45分まで。ご覧になれる方はこれは是非観て欲しい作品なので、よろしくお願いいたします。(別府市ゆかりのあの元大臣も、残念ながら、という感じか。ま、そこも是非観てください)

 


Posted by にいさん at 2024年04月28日   21:44