にいさんの しらしんけん☆

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「母子像」と沖縄戦。(10月30日 宜野湾の佐喜真美術館にて)





https://haruniy.ti-da.net/e10985737.html

↑佐喜真美術館と「沖縄戦の図」について。

 (※佐喜真美術館に展示される「沖縄戦の図」は撮影は不可ですが、撮影可能な展示もあります。写真はそんな、撮影可能なものから)

 写真は、ケーテ・コルヴィッツ作の母子像(「ピエタ」)ドイツの版画家で彫刻家、コルヴィッツは、第一次世界大戦で息子を。第二次世界大戦では孫を、戦争で失いました。ヒトラーがドイツで政権を取った後、ケーテ・コルヴィッツは「反ナチス」の烙印を押され、芸術アカデミーを除名され、各地での展覧会が中止に追い込まれてしまいます。そして、ナチスドイツが無条件降伏する直前とも言える1945年4月に、77歳で生涯を終えました。

 生前は、ベルリンの労働者たち、配偶者の診療所を訪ねる貧しい境遇の人たちに囲まれながら、創作活動に励んだようです。農民について。戦争について描く中で(自らの体験も踏まえてでしょうか)『この世における最大の悲しみ、子に先立たれた母親という悲劇に普遍化した』(展示解説より)そんな作品たちが、ナチスにとっては〈好ましからざる〉という事になったようです。

 最近も、この国においても、何かそれを想起させるような出来事がなかったか?という既視感も覚えつつ。館長さんの詳しい解説に耳を傾けていました。

 この佐喜真美術館に展示されている「沖縄戦の図」には、実はこの「母子像」が重要なモチーフのひとつとして描かれていることを知りました。巨大な「沖縄戦の図」を今回改めてよくよく観察してみると、丸木位里・俊夫妻は、作品の随所に母子像を思わせる「母と子の姿」が、それはもう沢山描きこまれているではありませんか。その姿のひとりひとりには、実際にモデルさんがいて、モデルさんにそうした設定での心理を想像してもらって、表情をつけてもらい、体験者の証言と、肉体とを通して、ひとつひとつの描写に確かな生命力を持たせていたのです。

 戦争で子どもを失った母親の悲しみを、もう誰にも味合わせたくはない。時代を超えて、普遍的なメッセージを持った母子像が、その後も生命力を放ち続けて、丸木夫妻や、その後の時代に続く現代のアーティストたちが、母子像をルーツとした作品を今もなお創作し続けている事を、実際に本物の作品を通して教えてくれる場所がここにある価値-というものを改めて、考えさせられました。

 私は芸術家ではないけれど、これらの作者の生み出してくれた作品の意味を(わずかではあれども)受け取る事は出来るはずだ。それを誰かと共有することも。

 今回旅に誘ってくれた同行者と、その後、美術館の屋上へと登りました。敷地の周りに張り巡らされたフェンスと、木々を挟んでその先に広がる滑走路。

 〈コルヴィッツの悲しみ〉が、時間を超えて、頭の中に入り込んできたような錯覚に、わずかに狼狽えました。




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Posted by にいさん at 2022年11月05日   10:47